冬の日本海のカニには、脚に色つきのタグが付いています。青、ピンク、緑、白。色ごとに宿のプランの値段も変わります。
このタグが示しているのは、水揚げした港と漁船です。産地の証明であって、味の等級ではありません。
では同じタグなら同じ味かというと、そうでもありません。身の詰まり方には差があります。しかもその差には理由があります。
この記事では、タグの仕組みと、同じブランドでも身入りが違う理由、そのうえで宿・タグ付きかどうか・時期をどう決めるかをまとめます。
松葉ガニのタグ早見表
| ブランド | 水揚げ港 | タグ | 近い温泉地 |
|---|---|---|---|
| 津居山ガニ | 兵庫・豊岡市 津居山港 | 青 | 城崎温泉 |
| 柴山ガニ | 兵庫・香美町 柴山港 | ピンク | 香住・柴山 |
| 間人ガニ | 京都・京丹後市 間人港 | 緑 | 間人・京丹後 |
| 浜坂ガニ | 兵庫・新温泉町 浜坂港 | 白 | 浜坂温泉郷・湯村温泉 |
| 鳥取松葉がに | 鳥取・網代/賀露/境港 | 赤 | 皆生温泉 |
| 香住ガニ | 兵庫・香美町 香住港 | 黄 | 香住。紅ズワイで別種 |
タグの色は、宿プランの価格帯の目印にもなります。どの港のカニを出す宿かで、プランの値段が変わるからです。
※津居山の青と間人の緑は、城崎温泉観光協会と京丹後市観光公社の公式サイトでも確認できます。ほかの色は専門店・販売店の解説によるものです。宿のプランや商品ページの表記もあわせて確認してください。
- 松葉ガニの解禁は11月6日、漁期は翌3月20日まで(メスのセコガニは12月末まで)
- 香住ガニは9月1日解禁で、翌5月末まで
タグは、味の等級ではない
京丹後の鮮魚店は、上ランクの蟹にも下ランクの蟹にもほぼ全てに同じタグが付いている、と書いています。タグの色で味や品質が変わるわけではない、とも。
制度の側からも、そう読めます。京都府では、緑タグを他府県産に付け替える産地偽装が起きました。
2024年から、産地を示す色つきのタグとは別に、漁船ごとの通し番号とQRコードが入った白いプレートが追加されています。QRを読んで漁協のサイトで番号を検索すると、水揚げ日と船名がわかります。
タグが担っているのは、味の保証ではなく産地の追跡だということです。
ただし味と無関係でもありません。鳥取の最高級「五輝星(いつきぼし)」は、甲幅13.5cm以上・重さ1.2kg以上に加えて、身が詰まっていることを条件に挙げています。
等級が上がると、身入りが条件に入ってくるものもあります。
同じタグでも、身入りに差が出る
カニは最終脱皮のあと、時間をかけて身が詰まる
ズワイガニのオスは、稚ガニから10回から12回の脱皮を重ねて最終脱皮に達します。それ以降は脱皮しません。
最終脱皮の直後は、殻がやわらかく、身もほとんど入っていません。そこから餌を食べて、時間をかけて身が詰まっていきます。
つまり同じ港で同じ日に揚がったカニでも、最終脱皮からの経過時間が違えば、身の入り方が違うということです。
脱皮から半年以内のものは「水ガニ」「若松葉ガニ」と呼ばれ、松葉ガニとは別に扱われます。身入りは成熟したものの6割程度、価格は4分の1ほどとされます。
殻がやわらかくて食べやすいので、地元では親しまれています。
甲羅の黒い粒は、脱皮からの時間の跡

甲羅に付いている黒い粒は、カニビルの卵です。
脱皮からの時間が経っているほど付着する量が増えるので、身入りの目安として見られます。甲羅の傷も同じ見方をされます。黒い粒が多いカニほど、身が詰まっている可能性が高いということです。
宿で出てくるカニは選べないので、これは通販で丸ごと買うときの見方になります。
選別が見ているのは、外から見えるところ
間人ガニは約50の基準で選別されます。柴山ガニはさらに細かくランクを分けます。
では何を見て分けているのか。基準として挙がっているのは、大きさ、重さ、脚の欠け、傷、色つや。外から見てわかるところです。
鳥取県がタグの条件として数値で示しているのも、甲幅11cm以上という大きさでした。県は「11cm以上で高品質のもの」と書いていますが、その高品質が何を指すかまでは示していません。
身入りが条件としてはっきり出てくるのは、五輝星のような一部の上位等級からです。
つまりタグ付きが確実にしてくれるのは、産地と、大きさや姿のほう。身入りまで保証されているわけではありません。
産地ごとの特徴
味の優劣ではなく、漁場や漁のやり方、選別の仕方の違いです。宿を選ぶときは、まずどの温泉地に泊まりたいかで絞ると早いと思います。
間人ガニ(京都・京丹後)
日帰り操業が最大の特徴です。経ヶ岬の沖合20〜50kmの漁場へ出て、海上で停泊せずにその日のうちに帰ってきます。船は小型底曳網が5隻だけ。
漁に出られる日が天候に左右されるうえ、船数が少ないので、水揚げ量そのものが限られます。
緑のタグには「たいざガニ」の文字と船名が刻印されていて、漁師が船の上で一匹ずつ手作業で付けていきます。
津居山ガニ(兵庫・豊岡)
豊岡市の津居山港に揚がったものだけが名乗れる、青いタグのカニです。すらりと伸びた長い脚と、姿の美しさが評判です。
城崎温泉から近く、宿のカニプランで見かける機会がいちばん多いブランドです。外湯めぐりとあわせて泊まるなら、この青タグを出す宿が選択肢になります。
柴山ガニ・浜坂ガニ(兵庫・香美町/新温泉町)
柴山港のカニはピンクのタグです。100以上のランク分けがあり、選別の厳しさは日本一といわれます。
最高級の「柴山GOLD」は、指の欠けがなく、体重1.35kg以上、左右のバランスが良いもの。漁業者と選り手と仲買人の全員が認めたものだけが名乗れます。
ここに並ぶのも、欠け、重さ、姿です。最高級と呼ばれる等級でも、身入りは条件に入っていません。
隣の浜坂港は白いタグです。浜坂温泉郷や湯村温泉が近く、カニを目当てに泊まるならこちらも選択肢になります。
鳥取松葉がに(鳥取)
網代漁港、鳥取港(賀露)、境漁港に揚がります。底曳網の船が、県沖の水深300〜400mで獲ります。
基準の数値がはっきりしているのがこのブランドの特徴です。鳥取県は、甲幅11cm以上で品質の良いものに鳥取産を証明するタグを付けて出荷するとしています。
甲幅9cm未満は海に戻します。
最高級の「五輝星(いつきぼし)」は、甲幅13.5cm以上、重さ1.2kg以上、脚が全てそろっている、鮮やかな色合い、身が詰まっている、という5条件。
これに通るのは全体の0.1%に満たないとされます。
香住ガニ(兵庫・香美町)※松葉ガニとは別種
香住ガニは紅ズワイガニで、松葉ガニ(ズワイガニ)とは別の種類です。ここは混同されやすいところです。
生息する水深が違います。松葉ガニの漁場が水深300〜400mなのに対し、紅ズワイは水深400mから2,700mに分布し、その中心は1,000〜2,000mの深海です。
漁の方法も、松葉ガニの底曳網に対してかご漁になります。
解禁が9月1日と早く、翌5月末まで漁期が続きます。漁獲量が多いぶん価格も手頃で、松葉ガニより気軽に楽しめます。
香住で香住ガニと松葉ガニを食べ比べた話と、泊まった宿2軒の比較は香住のカニ宿おすすめ2軒を比較に書いています。
食べてきて思うこと
私はこれまで、丹後、香住、北陸と、いくつかの土地でカニを食べてきました。どこも美味しかったです。
ただ、身の詰まり方や味の濃さには一杯ごとの差がありました。それは産地の差というより、その一杯の個体差だと思っています。身の詰まり方の差は、最終脱皮からの経過時間で説明がつきます。
丹後で間人ガニを食べたときは、値段の高さに驚きました。調理する前に、生のまま持ってきて見せてくれました。大きくて姿が綺麗でした。

どう選ぶか
カニを食べに行くときに決められるのは、どこに泊まるか、タグ付きにするかどうか、いつ行くかの3つです。カニそのものは選べません。
どこに泊まるか
タグの色は港の名前なので、泊まりたい温泉地を決めれば、出てくるカニのタグもだいたい決まります。
- 外湯めぐりもしたい → 城崎温泉(津居山ガニ)
- カニを中心に据えたい → 香住・柴山、浜坂・湯村
- 幻のカニと言われるものを → 京丹後・間人(間人ガニ)
- 山陰をドライブで → 皆生温泉(鳥取松葉がに)
タグ付きを選ぶ場合
タグが付いていても、身入りの個体差はあります。ただ、小さいものや脚の欠けたものは選別ではじかれているので、大きさと姿は決まった状態で出てきます。
写真の2杯も、大きさと姿は揃っていました。タグが約束しているのは、まずそこです。年に一度のことなら、そこが決まっているだけでも選びやすいと思います。
タグなしを選ぶ場合
タグが付かないカニは、甲羅のサイズや脚の欠けで外形の基準から外れたものです。専門店は「品質が劣るのではなく、見た目の基準で除外されたもので、味はタグ付きと変わりません」と説明しています。
家で食べるなら、こちらで十分という考え方もあります。
いつ行くか
解禁直後は水揚げが多く、店も宿も賑わいます。ただ身入りが良くなるのは12月から2月とされていて、価格も解禁から年末にかけて上がり、年明けから下がる傾向があるそうです。
日程を選べるなら、年明けが有利ということになります。宿も年末年始より取りやすくなります。
9月から食べる場合
松葉ガニの解禁を待たなくても、9月1日から香住ガニが始まります。紅ズワイなので松葉ガニとは別のものですが、価格は手頃です。秋のうちに一度カニを食べておく、という選び方もあります。
よくある質問
Q. 宿のプランがタグ付きかどうかは、どう見分けますか?
プラン名や説明文に「津居山ガニ」「柴山ガニ」など港のブランド名が入っていれば、タグ付きの可能性が高いです。ただし表記だけでは判断しきれないので、こだわるなら宿に直接確認するのが確実です。
Q. プランはどう選べばいいですか?
宿のカニプランは、カニの量や品数で何段階か用意されているのが一般的です。プランごとに何杯分なのかが書かれているので、そこを見比べることになります。
食べきれるか不安なら、まず標準のプランから選んで、足りなければ追加するほうが失敗が少ないと思います。
Q. カニの値段は年によって変わりますか?
変わります。漁獲量によって相場が上下するため、宿のプラン価格も年ごとに違います。早めに予約するときは、その年の相場を見てから決めるほうが安心です。
Q. 香住ガニと松葉ガニは何が違いますか?
種類が違います。香住ガニは紅ズワイガニ、松葉ガニはズワイガニです。生息する水深も漁法も解禁日も別で、香住ガニは9月1日、松葉ガニは11月6日の解禁。価格は香住ガニのほうが手頃です。
Q. セコガニ(メス)はいつ食べられますか?
11月6日から12月末までと、漁期がとても短いです。オスより小ぶりで、価格も手頃とされます。11月から12月に行くなら、宿のプランに含まれているかを見てみてください。
まとめ
松葉ガニのタグは、水揚げした港と漁船の証明です。味に等級を付けるものではありません。
同じタグでも身の詰まり方には差があります。カニは最終脱皮のあと時間をかけて身が詰まるので、その経過時間で変わるからです。
タグが決めているのは、産地と、大きさや姿までです。身入りの保証はそこに入っていません。そこを承知したうえで、大きさと姿が決まっているほうがいいなら、タグ付きを選ぶことになります。
宿を決めれば、出てくるカニの色は自然についてきます。日程を選べるなら年明けが有利です。松葉ガニの前に一度食べておくなら、香住ガニが9月から出ます。
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