奈良・洞川温泉は何度でも行きたい|名水と川魚、山あいの温泉街へ

奈良・洞川温泉は何度でも行きたい|川魚と鴨鍋、名水で仕込む地酒「大峰山」

最近のとにかく暑い状況から逃げ出したい、そう思うことはありませんか?

できれば人混みの観光地ではなく、涼しくて、水と空気がきれいで、美味しいものがある場所がいい。そんなわがままにこたえてくれるのが、奈良県・天川村の洞川(どろがわ)温泉です。もともとは奈良南部の十津川方面の温泉に通っていて、ほかにもいい湯はないかと調べるうちに出会ったのが、この洞川でした。十津川より行きやすいのも気に入って、私は夏の終わりや秋など季節を変えて、何度も足を運んでいます。

標高は約820メートル。夏でも日陰はひんやりと涼しく、避暑地として知られています。その分、寒い頃になると、奈良とは思えないほど雪が降り積もるのも特徴です。レトロな温泉街、名水で育つ川魚、体を温める鍋、そしてその名水で仕込んだ地酒——書きたいことがたくさんある場所なので、私が何度も通って好きになった洞川温泉の楽しみ方をまとめていきます。

この記事でわかること

  • 洞川温泉はどんなところか
  • あまご・鮎の塩焼きと、鴨や猪の鍋の話
  • 名水「ごろごろ水」と名水豆腐
  • その名水で仕込む地酒「大峰山」
  • 道中のお楽しみ、黒滝の串こんにゃく

目次

洞川温泉ってどんなところ?

洞川温泉は、奈良県の南、吉野郡天川村にある温泉地です。修験道の聖地・大峯山(おおみねさん)の登山口にあたり、昔ながらの旅館が軒を連ねる温泉街は、夜になると提灯に灯がともって、どこか懐かしい雰囲気に包まれます。

なにより、水と空気がきれいです。後で触れる「ごろごろ水」をはじめ、町全体が名水の里。標高が高いぶん夏でも涼しく、避暑地として知られているのもうなずけます。

ただし冬は一転、冷え込みのきびしい土地でもあります。私が11月に訪れたときも、すでに雪が積もっていて驚きました。多い年には数十センチ積もることもあるそうで、冬に車で行くなら、冬用タイヤやチェーンの準備をお忘れなく。

雪が積もった洞川温泉の街並み
冬の洞川温泉。奈良市内とは思えないほど雪が積もる

大阪市内からなら車でおよそ1時間半。観光地のど真ん中ではないので、「有名どころは少し疲れる、でも旨いものは食べたい」という人にこそ向いていると思います。


やっぱり川魚|あまご・鮎の塩焼き

洞川で外せないのが、川魚の塩焼きです。あまごや鮎を炭火でじっくり焼いたもので、皮は香ばしく、身はふっくら。澄んだ水で育った川魚ならではの、上品な味わいです。

あまごの塩焼き
皮は香ばしく、身はふっくら。川魚ならではの上品な味わい

私がお昼によく立ち寄るのが、温泉街のバス停前にあるみやそい。注文を受けてから焼いてくれるあまごの塩焼きが名物で、外はパリッ、中はふっくら甘い。名水で作った冷ややっこや天川産のこんにゃくも付いてきます。これで昼から日本酒を一杯やるのが、洞川での私の定番になっています。鹿や猪のジビエもありますよ。

炭火の川魚といえば、亀清(かめせい)も有名どころ。鮎の炉端焼きの名店として知られていて、香ばしい一尾を目当てに訪れる人も多いお店です。

このほか、つかみ取りや焼きたてが味わえる川魚センターもあって、楽しみ方はいろいろ。洞川に来たら、まずはこの川魚を味わってほしいなと思います。


体を温める鍋|鴨や猪、山の幸

昼にみやそいで川魚を楽しんだら、夜は宿の夕食です。私は泊まると、たいてい鴨鍋をいただきます。鴨の脂のうまみが出汁に溶け出して、体の芯から温まる。山あいの宿で、湯気の立つ鍋を囲む時間は、それだけで来てよかったなと思えます。

宿の夕食に出た鴨肉と鍋
美しく盛られた鴨肉。脂のうまみが出汁に溶け出す

このあたりは、猪(ぼたん)や鹿といったジビエが出る宿もあります。泊まる宿によっては、川魚のお造りが付いたり、湯豆腐をメインにしていたりと、夕食の顔ぶれもさまざま。山の恵みが食卓にのぼるのも、こうした土地ならではですね。昼は川魚、夜は鴨鍋でじんわり温まる——洞川での私の定番の流れです。


名水の里|ごろごろ水と名水豆腐

洞川を語るうえで欠かせないのが、名水「ごろごろ水」です。環境省の「名水百選」にも選ばれた湧き水で、地下を流れる水が立てる音から、この名前がついたそうです。汲み場にはポリタンクを持った人が並ぶこともあるほどで、わざわざこの水を求めて訪れる人もいます。

その水で作られるのが名水豆腐。とくに有名なのが、大通り沿いにある創業90年あまりの名水とうふ 山口屋です。ごろごろ水を使い、昔ながらの手作業で仕込む豆腐は、ひと口食べると大豆のやさしい甘みとなめらかな口当たりが広がって、「水が違うと、こんなに変わるのか」と感じます。人気店で、昼過ぎには売り切れていることもあるので、早めの時間がおすすめです。

この豆腐、お土産にも買って帰りたくなるのですが、ひとつ注意点があります。要冷蔵なので、持ち帰りには保冷の準備を。保冷箱は有料で買えますが、クーラーボックスや発泡スチロールを持参するのが定番です。私もお土産にするときは、保冷の用意を忘れないようにしています。きれいな水は、料理そのものをおいしくしてくれるんだなと、洞川に来るたびに思います。


名水で仕込む地酒「大峰山」

そして、お酒好きとして見逃せないのが地酒です。私がみやそいのお昼に合わせたのが、その名も「大峰山(おおみねさん)」。藤村酒造がつくる地酒で、仕込み水にあの「ごろごろ水」を使っているそうです。

川魚の塩焼きと地酒「大峰山」
昼から、川魚の塩焼きを肴に地酒「大峰山」を一杯

正直に言うと、私が飲んだのは手軽な小瓶(300ml)。味わいは、華やかというより”昔ながらの素朴な日本酒”という印象でした。インパクトのある一杯ではないけれど、川魚の塩焼きの横で、肩肘張らずにくいっとやるにはちょうどいい。料理の邪魔をしない素直さは、好きな人も多いと思います。

「名水で育った川魚を、同じ名水の地酒で味わう」という土地の物語は、なかなか他では味わえません。手軽な一杯でも、その背景を思いながら飲むと、ぐっと特別に感じられます。

川魚や鴨に合わせるなら、冷やでも、少し温めても。温度を変えて表情を楽しむのも、地酒のおもしろさです。その土地の料理と一緒に、ゆっくり味わってみてください。

奈良の地酒についてもっと知りたい方は奈良の地酒おすすめ5選、なぜ奈良が酒どころなのかは奈良は日本酒発祥の地もどうぞ。


温泉と街歩き、周辺の見どころ

食べて飲んだら、やっぱり温泉です。洞川の湯は弱アルカリ性の単純温泉で、無色透明のクセのない、やわらかな肌ざわり。神経痛や冷え、疲労回復などにいいとされ、川魚と地酒で満たされた体を、ゆっくりほぐしてくれます。宿泊客が多すぎないぶん、貸切で入れる宿があったりと、落ち着いてゆっくり浸かれるところが多いのもうれしいところです。

温泉街には共同浴場の洞川温泉ビジターセンターもあって、私も何度も通っています。とくに露天は、雪の季節になると風情がぐっと増して、冷たい空気のなかであたたまるのが最高です。ただし定休日(休みの曜日)があるので、出かける前に確認しておくと安心です。

提灯のともる温泉街を、浴衣でぶらぶら歩くだけでも、いい夜になります。

夜の洞川温泉街と提灯
夜になると提灯に灯がともる、レトロな洞川の温泉街

街を歩くと、あちこちで見かけるのが「陀羅尼助(だらにすけ)」の看板です。洞川に古くから伝わる和漢の胃腸薬で、その歴史はなんと約1300年。修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が作ったとも伝わり、キハダ(黄檗)を主原料に、大峯山の行者や参拝者のお土産として親しまれてきました。今も温泉街には十数軒の老舗が軒を連ねていて、洞川ならではのお土産です。お酒好きとしては、飲みすぎ・胃もたれのお供に、というのもちょうどいいかもしれませんね。

街の中心には、名水「ごろごろ水」で仕込むクラフトビールの立ち飲み(洞川温泉醸造所)もあります。この地ビール、じつは先ほどの陀羅尼助の老舗が手がけているもの。湯あがりの一杯にぴったりで、川魚も地酒も、そしてビールまで同じ名水から——と思うと、洞川という土地のおもしろさを感じます。日本酒以外の一杯を試したい人にもおすすめです。

周辺には自然の見どころも多く、私のお気に入りは鍾乳洞です。洞川には2つあって、ひとつは温泉街から坂を上った面不動(めんふどう)鍾乳洞。関西最大級の規模で、洞内は夏でもひんやり涼しく、切り株の形をしたかわいいモノレールで上がれます。もうひとつは、ごろごろ水の汲み場の近くにある五代松(ごようまつ)鍾乳洞。こちらはヘルメットをかぶって進む、探検気分たっぷりの洞窟で、雰囲気がまた違います。私はどちらも行きましたが、モノレールでの道のりも含めて、それぞれに楽しいです。

面不動鍾乳洞の入口
関西最大級の面不動鍾乳洞。洞内は夏でもひんやり涼しい
五代松鍾乳洞のモノレール
五代松鍾乳洞へは、赤いモノレールに乗って入口へ

一方、エメラルドグリーンの渓流で知られるみたらい渓谷だけは、まだじっくり歩けていません。次に訪れるときの楽しみに取っています。自然も満喫したい人は、食事とあわせて計画してみてください。


道中のお楽しみ|黒滝の串こんにゃく

洞川へ向かう道中、私がいつも立ち寄るのが、黒滝村の道の駅「吉野路黒滝」です。

ここの名物が、串こんにゃく。出汁がしっかりしみて、ほんのりピリ辛。なにより弾力がプリッとしていて、噛むほどに出汁の旨味があふれます。1本100円と安いのに大ぶりで、地元のおばあちゃんたちの手づくり。ドライブで小腹がすいたところに温かい串こんにゃくは、洞川旅のはじまりの、ささやかだけど外せない楽しみになっています。売っている場所は端のほうにあるお店なので、ぜひ探してみてください。

冬に行くと、猪汁(ししじる)——猪肉の入った、豚汁のような汁物——があるのもうれしいところ。寒いなかでいただくと、じんわり体に沁みわたります。旅の入口から、しっかりおいしい土地です。

黒滝の道の駅の猪汁
冬限定の猪汁。寒いなかでいただくと、じんわり体に沁みわたる

よくある疑問(FAQ)

Q. 洞川温泉は日帰りでも楽しめますか?
A. 川魚や名水豆腐、街歩きは日帰りでも十分楽しめます。ただ、夜の温泉街の雰囲気や鍋を囲む時間はやはり泊まりならでは。せっかくなら一泊して、夜と朝の静けさも味わってほしいです。

Q. 行くなら夏がいいですか?
A. 避暑地として知られるので夏は涼しくて快適ですが、私が訪れたのは秋も多く、山あいの紅葉もきれいです。冬は雪景色で、それはそれで風情があります。季節ごとに表情が変わるので、いつ行っても楽しめると思います。

Q. 車がなくても行けますか?
A. 行けますが、本数は多くありません。近鉄下市口駅からバスでアクセスできます。周辺をゆっくり回るなら車のほうが便利です。


まとめ:水のきれいな山里で、川魚と一杯を

洞川温泉は、派手な観光地ではありません。でも、水と空気がきれいで、川魚と鍋がうまくて、名水で仕込んだ地酒がある——そんな、何度でも帰りたくなる山里です。

  • あまご・鮎の塩焼き鴨や猪の鍋で、山の幸を
  • ごろごろ水・名水豆腐と、その水で仕込む地酒「大峰山」
  • 道中、黒滝の串こんにゃくにも立ち寄って

夏の暑さに疲れたら、涼しい山里へ。きれいな水で育ったものを、きれいな水の地酒で。次の週末、ちょっと足を延ばしてみませんか?

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