奈良・十津川温泉は秘境がご褒美|源泉かけ流しの宿と谷瀬の吊り橋・笹の滝

たまには、人混みとは無縁の場所で、ちゃんといい湯にゆっくり浸かりたい——そう思うことはありませんか?

できれば、お湯は循環でなく源泉かけ流し。食事は、その土地でしか食べられないものがいい。そんな願いをまるごと叶えてくれるのが、奈良県の最南部、十津川(とつかわ)温泉です。

じつは私が洞川温泉に通うようになる前から、何度も足を運んでいたのがこの十津川でした。道中はなかなかの山道で、車は必須。でも、たどり着いた先には、驚くほど透明度の高い川と、日本一の吊り橋と、体の芯までほどけるかけ流しの湯が待っています。この記事では、私が通って好きになった十津川の楽しみ方をまとめていきます。

この記事でわかること

  • 十津川温泉はどんなところか(全国初の「源泉かけ流し宣言」の村)
  • 泊まった宿2軒の正直な比較(山水とホテル昴)
  • 谷瀬の吊り橋と、日本の滝百選・笹の滝
  • 熊野本宮大社への足延ばし

目次

十津川ってどんなところ?|日本一大きな村は、まるごと秘境

十津川村は、奈良県の一番南にある、日本一面積の大きな村です。村の96%が山林という文字どおりの山里で、大阪方面からは国道168号をひたすら南下していきます。

正直に言うと、道はそれなりに大変です。山あいのカーブが続くので、車の運転に慣れていない方は覚悟がいるかもしれません。私も冬は路面が怖いので避けていて、行くのはもっぱら暖かい季節。それでも何度も通ってしまうのは、この「たどり着くまでの遠さ」の先にある景色と湯が、それだけの価値をくれるからです。

そして十津川村のすごいところは、温泉の姿勢です。村内の湯泉地(とうせんじ)・十津川・上湯の3つの温泉すべてで、2004年に全国で初めて「源泉かけ流し宣言」をしています。つまり、村のどこで湯に浸かっても加水・循環なしの源泉かけ流し。温泉好きにはたまらない村なんです。


お湯の話|透明なのに、トロッとまとわりつく

十津川温泉のお湯は、見た目は透明。なのに浸かるとトロッと肌にまとわりつくような感触があって、これがすごく気持ちいいんです。泉質はナトリウム炭酸水素塩泉——いわゆる「美人の湯」と呼ばれるタイプで、あのトロッと感はこの泉質によるものだそうです。

温度も熱すぎない適温で、かけ流しの新鮮なお湯にゆっくり長く浸かれます。蛇口をひねれば出てくるお湯とはまるで別物の、「湯そのものがごちそう」という贅沢。この感覚は、かけ流し宣言の村ならではだと思います。


泊まった宿①|静響の宿 山水——ジビエとすっぽん、渓流の露天

十津川で私が泊まったことがあるのは2軒。どちらも複数回泊まっているので、正直な印象を書きます。

まず「静響の宿 山水(さんすい)」。こちらの魅力は、なんといっても食事です。鹿や猪といったジビエの会席に、すっぽん料理まで——他ではなかなかお目にかかれない献立が並びます。山里の宿で、その土地の力のある食材をいただく。これが旅の醍醐味だなと、行くたびに思います。

山水のすっぽん料理
山水で。すっぽんなど、ここでしか食べられない献立が並ぶ

お風呂も見事です。渓流沿いの露天風呂は自然との一体感があって、川の音を聞きながらのんびり浸かれます。寝湯や貸切風呂など湯船の種類も多く、24時間かけ流し。夜と朝で表情の違う露天を楽しめるのは、泊まりならではですね。

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泊まった宿②|ホテル昴——整った和食と、珍しい温泉プール

もう1軒が「ホテル昴(すばる)」。こちらは村を代表する大きめの宿で、山水とはまた方向性が違います。

食事は、きれいに整った和食のコース。一品一品が丁寧で、安心感のある美味しさです。山水の「珍しいものを食べる楽しさ」に対して、昴は「端正な会席をゆっくり味わう」タイプ。どちらが上ではなく、その日の気分で選び分けるのがいいと思います。

温泉ももちろん源泉かけ流しで、浴場が広く清潔。そして昴には、国内でも珍しい温泉を使った25mプールがあります。じつは私はまだ入ったことがなくて、子どもがもう少し大きくなったら一緒に入るのが、ひそかな楽しみです。家族連れには特にうれしい設備だと思います。

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谷瀬の吊り橋|スリルは本物、日本一の生活用吊り橋

十津川に来たら外せないのが、谷瀬(たにぜ)の吊り橋です。長さ297m・川面からの高さ54m。生活用の鉄線吊り橋としては日本一の長さで、昭和29年に地元の住民がお金を出し合って架けたという歴史も面白い橋です。

谷瀬の吊り橋
長さ297m・高さ54m。渡るほどに揺れる、日本一の生活用吊り橋

私は高いところが平気なほうなので、ここの散歩がとにかく好きです。眼下に山と川がきれいに広がって、吹き抜ける風が気持ちいい。橋の下に見えるキャンプ場を眺めながら、ゆらゆら揺れる橋の上をのんびり渡る——何度行っても楽しいスポットです。ただし足元の板の隙間から川面が見えるので、高いところが苦手な方にはなかなかのスリルかもしれません(笑)。国道168号沿いで駐車場もあるので、十津川温泉へ向かう道中に立ち寄るのにちょうどいい位置にあります。


笹の滝|たどり着くのは大変、でも大迫力のご褒美

そしてもうひとつ、私が十津川で強くおすすめしたいのが笹の滝です。「日本の滝百選」にも選ばれた、落差約32mの名瀑。何がすごいって、滝のすぐそばまで寄れるんです。

笹の滝
日本の滝百選・笹の滝。すぐそばまで寄れて、水しぶきの大迫力を浴びられる

岩の下をくぐるように進んでいくと、目の前に轟音とともに水が落ちてくる。水はどこまでも澄んでいて、水量もたっぷり。まわりの川もびっくりするほど透明度が高くて、「秘境に来たなあ」という実感がこみ上げてきます。私にとって、十津川の思い出のいちばん濃い部分はここかもしれません。

ただし正直に書いておくと、アクセスの難易度は高めです。国道168号から林道に入って10km以上、後半は道幅の狭い区間が続くので、対向車への注意が必要です。路面に石や枝が落ちていることもあるので、スピードは控えめに。駐車場から滝までも岩場を10分ほど歩くので、歩きやすい靴で。それでも、あの迫力にはたどり着くだけの価値があると思います。


足を延ばして、熊野本宮大社へ

十津川温泉まで来たら、そのまま国道168号を南へ下って、和歌山県の熊野本宮大社まで足を延ばすのもおすすめです。車で30〜40分ほど。世界遺産・熊野三山の中心で、シンボルの八咫烏(やたがらす)があちこちに描かれた、堂々たるお社です。

熊野本宮大社
十津川から車で足を延ばせる熊野本宮大社。八咫烏が旅を見守る

参道のまわりにはお店も並んでいて、参拝とあわせてぶらぶら歩くのも楽しい。すぐ近くの旧社地・大斎原(おおゆのはら)には高さ約34mの日本一の大鳥居が立っていて、田んぼの中にそびえるその姿は一見の価値ありです。「奈良の秘境の湯に泊まって、翌日は熊野詣で」——この組み合わせ、旅の満足度がかなり高いです。

道中の休憩には、村の中心にある道の駅「十津川郷」をどうぞ。駐車場のそばに温泉の足湯があり、2階にはそば処も。運転の疲れをほぐすのにちょうどいい場所です。


よくある疑問(FAQ)

Q. 車がなくても行けますか?
A. 路線バスはありますが(大和八木駅からの日本一長い路線バスが有名です)、本数が限られるうえ、笹の滝など村内のスポット巡りには車がほぼ必須です。山道の運転に不安がある方は、無理せず宿でゆっくり過ごす旅程にするのがおすすめです。

Q. 行くならいつがいいですか?
A. 私は新緑から秋にかけての暖かい季節に行っています。冬は路面が凍ることがあり、山道の運転が怖いので個人的には避けています。雪道に慣れていない方は、暖かい季節が安心だと思います。

Q. 日帰りでも温泉に入れますか?
A. 入れます。日帰りならまずホテル昴が定番で、日帰り利用の方も多い宿です。山水も日帰り入浴を受け付けています(いずれも時間・料金は各施設の公式情報をご確認ください)。ただ、十津川は道中が長いので、せっかくなら一泊して、かけ流しの湯を夜も朝も楽しむのが断然おすすめです。


まとめ:遠いからこそ、着いたときのご褒美が大きい

十津川は、気軽にさっと行ける場所ではありません。でも——

  • 村中の湯がすべて源泉かけ流し(全国初の宣言)
  • 山水のジビエ・すっぽんと渓流の露天、の端正な和食と温泉プール
  • 谷瀬の吊り橋のスリルと、笹の滝の大迫力
  • 足を延ばせば熊野本宮大社まで

「遠さ」がそのまま「ご褒美の大きさ」になる、そんな場所です。近場でぶらぶら歩きを楽しむなら洞川温泉、腰を据えて秘境と湯を味わうなら十津川。次の連休、少し遠くまでハンドルを握ってみませんか?

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